西宮詩夫の世界
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詩集「ナラバ騎士」

詩集「ナラバ騎士」

詩集 「ナラバ騎士」 (詩学社、2005予定)の中から

ナラバ騎士(ナイト)

 動詞の活用型を斉唱せぬおれを文法の教師は油引きした
床にひきおとし ならばズ/ならびケリ/ならぶ/なら
ぶトキ/ならべドモ/ならべキサマ が口ぐせのナラバ
騎士だ ならんでもなんにもならぬのだ 床油のしみる
ズボンで煤けた汽車の窓からやっとのって かあちゃん
ねえちゃん しんだばあちゃん まで名まえをよび席を
とり 荷物を網棚にしばりおれはきのうを出る

 せんせいはべつだ 駅で涙をこぼしながら ならばない
といけない つよいものだけ栄えてはいけない と手を
にぎりしめた 手がいたくてうなずいた 働きはじめた
職場の組合の幹部もそうだ 本庁で座りこみをしたあと
の屋台で たのむよきみたち順番だからと手をにぎった 
わからぬままうなずいた せんせいはやさしく年をとり
ならぶ列にわりこむ者がいると どちらのためにも涙を
ながした 幹部は最前列で放水をあびてもあかるく座り
こみ 順番だよと屋台で手をにぎり ある日 座りこみ
の排除を指令する本庁のソファにすわった 

 たてになるな 手をはなすな よこにならべ 斉唱して
も列はくずれる 駆けつける白馬も文法家もみあたらぬ
そこでナラン悪魔 黒衣のおまえが登場する 手をぬけ
ぬけがけしろ 考えずにならんでどうする とおまえは
うたう ならぶナならぶナと駆けだす人びとが列になる
列をこわしてもなんにもならぬ 電化・複線化された駅

  の広告塔がまぶしく おれは純度のひくいナラバナイト
きょうをぬけ出る列車をさがしている

春のいろ

 クラスのみんなはうしろで
ぼうず、ひめ、ぼうず、こわしてつんで
おれたち選手はまえで
きまり字のものがたりをえがく

 ム(きり)→ス(ゆめ)→メ(くもがくれ)

 あとふた月のがっこう
となりにすわるひとは
きょうもおれに気をとめず
肩をぶつけて
ちらしふだを射とめる
ムもスもメも
(取られてしまった)

 さんにんめの教師が
いぬもあるかぬぼうよみで

 ミカノハラワ/キテナガル/ルイヅミガハァ

 底冷えの体育館の
フロアふきだす、おおあらし
壇上みあげて「だれ だれ?」
そのひとの目に春のいろ
まぎれてひろった一枚は
(いつ見みきとてか 恋しかるらん)